4ブロックの散文

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頭が弱くなった。
心の中で響いたそのひとことを、認めざるを得なかった。
私は、頭を使わないあまり、脳の機能が低下してしまった。
その実感が、日に日に強まっているのだ。

たとえば、
つい数分前に話したこと、
昨日語ったこと、
数年前にこぼしたこと、
それら多くの私の台詞を、記憶の奥の方に仕舞い込んでいる。
ふとした「あ、そういえば」からはじまる話でも、
引き出しの中には空っぽの中身で、
「それ、誰のこと?」と聞き返すこともよくあるのだ。

 

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本を読んだ。
数年ぶりの実感でいたが、数日ぶりの読書だった。
このところ、
どうしても頭に入らず、いがいがした気分で本を閉じている。
今日もまた、どうしても活字がインクの染みとしか思えないまま、
数ページ進めただけで、箸を二つに割る、その逆再生のように、
未練の欠片もなく、本を閉じてしまうのだろうか……。

などと、読む前から諦めかけながら読みはじめたが、
これが、しっかり読めたのだ。
100頁を超えて、文庫本も終盤に差し掛かる近辺にたどり着いた。
読みはじめから本を閉じるまでの、頁の厚みをつまんだり、
その厚みのなかで、ストーリーを振り返るなどをした。

なぜ読めたかを考えた。
そうだ、野球中継を点けながら読んだからだ。
西武ライオンズの猛攻が流れるたびに、
視線を活字からテレビに向けて、またすぐに活字に潜る、
を繰り返していたからだ。
つまり、肩の力を入れずに、たいした集中もせずに、
ぱらぱらと活字一文字一文字をつまみ食いするように読んだからなのだ。

ほほう、じゃあ、今度からは、
野球のお供に、文庫本を選んでみようかな。
ただ、やっぱり、
腰を据えて読んでみたい気もしなくもないけれどな。

 

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明日が来ることにささやかな期待をすることが、
このところ出来ていない。
むしろ、よからぬことが頭に上り、
それならば、もうこの先は暗澹たる日々が待っているじゃないか、
と、心が折れる寸前まで、自分で負いこむことのほうが、
よっぽど精力的だ。

できることがあるくせに暇で暇で、
スマホ画面に常駐しているニュース一覧を眺めていたとき、
ひとつのニュースが目に入った。
『東京で16日連続雨』
この見出しがあったとき、私はハッと気が付いた。
「落ち込んでいるのは、これが原因では!?」

ここ5年ほど、天気に左右される体質にかわった。
それ以前にはなかったことで、
晴れていようが雨天であろうが、お構いなしに不調だった。
(ウキウキで好調、と嘘でも書きたい……!)
それが、何らかのステップが上がったのか、
天候によって、好不調の濃淡がはっきりと見えるようになったのだ。
そして、この16日連続降雨の東京となれば、
不調のひとつやふたつ、落ち込みのみっつやよっつ、
あってしかるべき、なんじゃないか。

ならば、晴れる日を待てばよいのだ。
晴天を見さえすれば、気持ちも多少は上がるのではないか。
ついでに、手に持っているものをスマホから文庫本に変えたら、
またよくなるんじゃないか??

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フィルム写真がやってきた。
先日、フィルム3本を写真屋さんへ現像に出した。
それがデータとともに、L判の写真として返って来たのだ。
写真屋さんから帰路につく電車のなかで、
1枚1枚をゆっくり眺める時間は、
どのような仕上がりになったか、いい出来か、よくなかったか、
ドキドキワクワクしながら味わう至福の時だ。
帰宅してすぐパソコンにも取り込み、
スマホにも同期したので、
どこでも眺め放題だ。
嬉しい。

 

自分の写真が好きだ。

窒息

苦しい。
体に力が入らない。
「心のスイッチ」とたとえるならば、
その在り処が知れない。
生きる気力も知れない。
今、何かしら死が待ち受けているとしても、
佇んだまま、微動だにせず眺め続けるだろう。
窓の外を。


誇らしいほどの青空で、
窓越しに熱気も伝わり、
今にも室内に浸入する、
そんな血気盛んな勢いに満ちている。


まるで隔離されているようだ。
何からだろうか。
しかしただただ、
「その場にいない」感覚が募る。
やりたいことが溢れるほどにある。
それなのに、心身が追いつかない。
もうひとつの気力が枯れて行く。
血液の流れが悪い。血管も細い。濃度も低い。



過活動の嵐よ去れ

京都市内を流れる鴨川の、川が二又に分かれる出町柳のデルタ。幼少のことだった。飛び石を渡りながら対岸を目指していた。ふとバランスを崩して、片足だけ川に落ちてしまった。


②風鈴の、江戸切子のように透き通ったガラスに差された赤と青の、金魚と水のよう。祭りの提灯と深い紺の夜空のよう。打ち上げ花火と煙を吸う夜空のよう。


③水のような青いフィルターのかかる視界は、夏の効果か、もしくはなにか。手の触れた貴方の腕がやけに青白い。森へ向かう足取りは、妙に軽く、宙に浮いたかのようにするすると進んでゆく。森の中は認識の限界に達した深緑。生きている濃度がじりじりと薄まってゆく。青白い肌の貴方は当て所なく、私の手を引き続ける。


④深夜だろうか、早朝だろうか。線路沿いに連なる森はさざめきが騒音のように鳴り続け、貴方の顔さえ判別がつかない。頼りになるのは外気を通じて漂う体温の気配のみ。私たちは森の中にいながら、ラッシュの都会の喧騒の中心に相違なく、互いの距離の近ささえ心許ない。しかし触れることは、それはいけない。目が覚めてしまう。長い夢が割れてしまう。今すぐに貴方に触れてみたい。その衝動もまた、頼りない寂しさや虚しさが負ぶさり、力をなくしていく。そうして、私は長い夢から覚める機会を先へ先へと伸ばすのだ。いよいよ、相手の存在は、間接的に伝う体温に絞られた。その時だった。銃撃戦が始まったようなけたたましさと共に、電車が横を通り過ぎた。車内の照明が慌ただしく、森を黄色に明滅させる。そして、視界の中央の熱い姿を晒し出した。木漏れ日、太陽の余り物のような、淡く薄い黄色の閃光が、貴方の相貌を暴いてしまった。




あまりにも、頭の過活動が、パニックが止まらないため、「自由に文章を書いていい」とゴーサインをかけた。メモ帳に書きなぐった文章。楽になった、かもしれない。